2011年5月11日

リーダーシップ論

大前研一氏というと、どうしてもマッキンゼー時代の「ビジネスモデル第一」みたいな印象が殆どなので、今回の震災後に発生した原子力発電所事故でどうして彼の名前が登場してきたのか、最初は凄く不思議だったんですが、元々は原子力屋さんだったんですね。で、その大前氏が書かれている震災関係コラムの一つ。福島第一の事故は未だ解決はしていないけれど、初期のような爆発事故や大量の放射能放出のようなこともなくなり、悪いなりにも安定してきているという印象を受けます。従って、コラムにも書かれているように、排出された放射能の影響も徐々に希釈化されていると考えるのが普通。実際、最近の映像を見ると、福島第一の現場で作業している人は別として、20km圏内で撮影されたと思われる映像も、軽装化しているように感じられます。「想定外」の所で今回の震災が発生した以上、必要以上に安全係数を設定しないといけないと言うことも分かるけれど、確かにもっと柔軟な対応をそろそろしないと、被災者の方の精神的な負担も大きくなるでしょうね。

で、昨日の首相記者会見で「(2030年までに原発比率 50%を定めた)エネルギー政策の白紙見直し」を言うわけですが、これも浜岡原発一時停止同様、唐突感・違和感を感じる発言。確かに今回の事故で、今後の原子力政策は見直しが必要だろうし、最悪の場合原子力発電全廃ということもあり得るでしょう。でも、現状でさえエネルギー不足が言われていて早急にエネルギーが必要なときに、原子力発電に直ぐに取って代わる事が出来る代替手段が今現在存在していないのに、そんな画に描いた餅の話をされても、という感じ。直ぐに思ったのが、前首相が言い出して結局反故にした「沖縄から米軍全面撤退」みたいな話。

仕事を通じて自分なりに体験した「リーダー・リーダーシップ」と言うことを考えると、大きく二種類あると思うんですね。一つは、アメリカの大統領型というか、「有言実行」タイプ。言うことも大きいけれど、それなりに実績も残すタイプ。ハイリスク・ハイリターンと言うと失礼かもしれないけれど、失敗もあるけれど成功も大きくてトータルではプラスになるタイプ。日本の首相では、小泉純一郎氏とか田中角栄氏辺りがこのタイプではないでしょうか。Visibilityもあるから世間的には受けが良いし人気もあるタイプ。もう一つは「番頭さん」タイプと言うとなんだそれですけど、表には出ないけれど調整して確実に仕事を進めていくタイプ。常にワーストケースを想定して複数のアクションプランを準備したり、杓子定規ではなく臨機応変に対応しようとするタイプ。日本の首相ではちょっと思いつかないけれど、もしかしたら佐藤栄作氏辺りは近いのかも。「結果が全て」という感じだから、本人は余り芽だ立たなくて、かえって部下の方が目立つような感じですかね。よく言えば「根回し上手」だけど、それが度を超してしまうと「談合、密約」なんて言うことにもなりかねないけれど。

で、見た目はそれらと同じように見えるけれど、実態は真逆な駄目駄目リーダーのタイプもあるわけで、全社の場合は「口先だけリーダー」。理由はどうあれ、何故か高いポジションに付いてしまったので、下に付くものは言うことを聞かなきゃいけない。でも、出てくる言葉は無理難題とか思いつきとか、とにかく「見た目や結果の大きさ」が最優先で、大局的な考えとか計画は考えられない人。一番苦労するのがこのタイプで、よかれと思ってやったことであっても自分の意向にそぐわないと気にくわなかったり、逆に自分よりも評価されると気にくわないタイプ。もう一つの「調整型」も、駄目なタイプは自分では何も出来なくて、その下で部下が一生懸命動いて何とか組織を回しているタイプ。本人は一生懸命やっているのかもしれないけれど、下から見ると一生懸命邪魔しているとしか見えないタイプで、とにかく黙ってイスに座っていて、必要な判子だけ押してくれと願いたいタイプ。

前者の場合は、トップダウン型の意志決定プロセスですが、この手のプロセスの場合、「トップが言えば後は何とかなる」と勘違いしている場合が多いですよね。トップダウンの場合、リーダーが提示しなきゃならないのは、ゴールと方向性。でも、多くの場合ゴール(目標)だけ言及して終わりになるので、その下のプロセスが迷走して結局ゴールを見失ったり、別の道に迷い込んだりして失敗するわけです。だから、リーダーとしては常に方向性を見失わないように、強く確実なメッセージを常に発信しないといけない。その継続性と信頼性が、そのリーダーシップに要求される最大の資質とも言えるんじゃないかと。一方後者の場合は、ボトムアップ型のプロセスであり、リーダーは大局的に子プロセスの進捗状況を見ながら、最終目的に向かってリソースやアウトプットを修練させていく方法。個人的には日本人好みの、これまで成功してきたシステムだと思いますが、この場合単にトップに立つリーダーだけでなく、中間層やそれぞれのプロセスを牽引する、チームリーダーとかタスクマネージャーみたいな人材にも恵まれないと、一部のプロセスが破綻するとその修復で多大なリソースが必要になり、全体に影響する事もしばしば。だから、スキルがあって経験も積んでいるチームだと無敵とも言える効果が出るけれど、そこに至るまでが大変とも言えます。

今の日本を見ていると、旧来の調整型システムが疲弊して不具合が目立ち始めたところに、小泉型のトップダウンプロセスの成功体験を共有した国民に、実はうちの方はもっと斬新なトップダウンシステムですよと綺麗なプローシャー(マニフェスト)を持って甘い言葉で勧誘してきた民主党につい「お得だね!」と契約したら、実は「トップダウン」は"Top Down"でも、駄目な方の"Down"だったというオチだった、と言ったら言い過ぎだろう(笑)。

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