2018年2月15日

誤訳か手抜きか

こちらの不破雷蔵氏のまとめが分かりやすいのですが、トランプ氏の対米貿易不均衡に対しての発言が、意図的なのか知識不足なのか、異なる意味に日本メディアで語訳されていた問題。もとの英文は"It's a little tough for them because they've gotten away with murder for 25 years."となっています。その前の部分の「米国は、中国、日本、韓国、その他多くの国に巨額を喪失してきた」を受けて、前半の「それは彼らにとっては些細なことで有る。なぜなら、彼らは(トランプ氏の意図としては「奴らは」と言いたいのかも-笑)25年間好き放題やって来たからだ。」とわかりやすく繋がります。ここを「... なぜなら、彼らは25年間殺人を犯しながら逃げている。」と訳したら、全然意味が繋がりません。

実は私も"get away with murder"が「好き勝ってしながら罰を逃れる」という慣用句であることを初めて知りました。でも、英語って結構構造的な言語で、多分理系向きな言語だと個人的には思っているので、その仕組みを解きほぐしていくと、案外当たらずとも遠からずな所には着地できる気がしています。今回も慣用句であることを知らなくても、その構造を考えたら、あんな「殺人をして」という訳には行き着かないと思うんですが。

まず"get away"。getは使役的な感じで「何々をさせる」みたいな意味の動詞だから、それがawayするということは、自分が何かから離れるという意味。よく映画で「Get away! (出ていけ!)」なんて言う台詞があるけれど、入れが一番馴染みがあるんじゃないだろうか。それ以外にも、何々から出る、と言う意味合いも同様な物。で、続く"with murder"なんだけど、その部分だけだ「殺人罪とともに、殺人事件とともに」となるから、仮に着訳しても「彼らは25年間、殺人事件とともに離れていた。」となるけれど、これでは意味が通じない。普通はこのあたりで、イディオムとか調べて「なるほど」と思う訳なんですが、ここで裏の意味を思うと「(本当は殺人罪何だけれど、上手いことをやって)25年間罪を免れていた」と言う意味に解釈すると、そこそこ筋が通る訳になる。ただし、別に人を殺していたわけでは無いし、"with murder"と不可算名詞を使っているから、具体的な殺人ではなく一般的な「殺人罪」という意味だと推測できます。本当に殺人というのであれば"with murders"になると思うんだけれど。いずれにしても、イディオムを知らずに直訳で訳しても「殺人罪を逃れている」という訳は出てくるけれど「殺人を犯しながら逃げる」という訳には、多分到達しない。

ここでふと思ったんですが、もしかしたら訳した人は「gotten away with murder」を、翻訳アプリに投げ入れたんんじゃないだろうか。試しに、"gotten away with murder"をGoogle翻訳とか幾つかのオンライン翻訳サービスに入れてみたら「殺人で逃げた」と訳された orz もしかして、これが理由? 仮にそうであっても、日本語にしたときに不自然な言葉になる事をメディアの人間なら感じろよ。幾ら英語-日本語と異なる言語ではあっても、どちらもコミュニケーション手段として確立している言語なんだから、ちゃんと翻訳すれば一方では意味が通っても、他方では意味が通らないと言う事は無いわけで、仮にそういう状況になったら翻訳がおかしいと先ず認識しないと。

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