責任の所在

昨日の石原元都知事の会見。内容的には、これまで発表されたこととそんなに大差なく新鮮味は無かったけれど、まぁ改めて組織の中での長としての責任論に収斂するのかなという感想。都知事をトップに、そのしたに様々な部局がピラミッド状に構成されていて、さらにそれぞれの組織には権限も委譲されているのは、トップの都知事がとんでもないスーパーマンで無い限り日々の全ての業務を理解して判断して決済することなど無理だから。ただ、組織体の最高責任者として、最後には知事の決裁が必要なわけだから、その判断はしないといけないけれど、それもその組織体を信頼してその上げてきたことを受け入れるか、それとも自分が何か拘りが有り自分も関心があればさらに詳細に検証することもあるだろうけど、今回の豊洲移転は前者のケースであったと言う事でしょうね。石原氏の当時の興味は、多分ディーゼルとか別の所にあったのでしょう。まぁ、そう言う意味で石原都政時の責任、という事は言えるかもしれないけれど、石原氏個人の責任と言うの無理があるのでは。そうなると、全ての責任をその時の首長が負わないといけなくなる。例えば福島第一原発が事故を起こしたから、当時の福島県知事に責任があるのか、と言う話にもなってしまう。

で、この会見を受けて小池都知事がメディアインタビューに答えているらしいけれど、少なくとも豊洲移転を止めたのは小池氏本人の責任であることは確か。別に議会から問題が上がっていたわけでも無いし、市場側も昨年11月の移転のつもりで準備をしていたのも事実。選挙戦での公約であるからと言う事で決めたのだと思うし、当時後に問題となる今年1月の検査結果を待ってと言うのは、まぁ理由としては納得できる。でも、結局そこで異常値が観測されてしまい、彼女としては公約で言ってきたことの顔は立てつつも、問題無いから予定よりも遅れたけれど豊洲移転、と言うシナリオを作っていたのが、予想外の結果でひっくり返ってしまい、内心困っているんだろうなぁ。だから、現状の「豊洲移転中断」にしても、仮にこの後「豊洲移転中止」「築地再改修」などの計画が出てくるようであると、それは恒星同じような疑問を後の知事から指摘されたら、それは彼女自身の責任となるでしょうね。

都知事選挙で圧勝して都議会与党の面子が潰れていたときではあるけれど、本来なら議会がちゃんと歯止めをしなきゃいけないわけで、既に採決されているスケジュールを変更するなら、少なくともその責任の所在を明らかにした上で進めておくべき。今の状況だと、今後小池氏の責任問題となっても、彼女としては「だって議会は何も反対しなかったじゃ無いの。一蓮托生」と言われたらお終いだろうなぁ。ただ彼女が失敗したのは、今回築地市場の過去の話が出てきたのに「コンクリとアスファルトの下の話」と二度も言及してしまったこと。これを聞いたときに思ったのが、彼女の中では色々噂されているように豊洲は別目的のために売却なり再利用するつもりで、逆に築地を残して「築地ブランド」を維持したいという欲が出てきたんじゃ無いだろうか。1月のかなり衝撃的な検査結果で、それまでの遅れたけれど豊洲に移転するというPlan Aが崩れたので、Plan Bとして築地に残ると言う選択肢を選んで以上、今度は築地で豊洲以上に悪い環境検査結果が出てきては困るわけで、それが明らかにダブルスタンダードと言える先の発言になったような気がする。で、彼女にPlan Cはあるのか。3月に出る再検査結果次第でしょうね。劇的に観測値が下がり、1月以前の値くらいまで戻れば、再び豊洲移転の話が言える。逆に、それでも築地に固執するためには何か別の理由を言わないといけない。

個人的には、3月の結果でよほどの異常値が報告されない限り、前言撤回の非難は出るだろうけど、築地の限界を理由に豊洲へ移転することを決定すれば、これまで彼女の優柔不断な対応に対しての批判封じも含めて解決出来るような気がするんですけどね。当然、何故昨年11月の予定をここまで伸ばしたという批判は出るだろうけど、それは1月の結果を理由に(本当は問題無い観測結果だけれど)、3月の再検査結果を待って判断した、と強弁すれば、まぁ取りあえず立場的には許されるんじゃ威だろうか。勿論、豊洲移転反対派にも賛成派にも恨まれるだろうけど、結局は彼女としては6月の都議会議員選挙の争点にしたいのだろうから、それまでこの話は先延ばしするんだろうけど。でも、それって知事としての仕事をしていないことになるのだけれど。知事ならば、必要な事を決定しなきゃいけないわけで、少なくとも今のところ市場担当の組織体からは問題無いという結論が出ており、だから東京都も豊洲市場を検収受入しているわけですからね。それに対して小池氏が反対しているという事は、それは彼女自身の責任に今はなっていることを理解しているのだろうか。多分、そんなこと考えられないというか、彼女の頭の中ではどうやって自分の望むゴールへベクトルを向けるのか、これまでの経緯を無視して都合の良いストーリー作りが全力で行われている気がする。