2011年10月14日

互換ビジネス

キヤノンの純正インクカートリッジと互換性のある非純正カートリッジが、キヤノンの特許を侵害していたという判決。ユーザーの立場としては、寄りやすくて高品質の物が出てくるのはウェルカムなんですが、企業側(エンジニア)の立場になると、やはり自分たちのビジネスセキュアということも重要。両方の立場を持つ自分としては、ちょっとジレンマを感じる判決でもあります。

ことコンピューターに限って言うと、いわゆるパソコンが爆発的に普及した理由の一つ、この互換性ビジネスによるんですよね。IBMのIBM-PCは、回路図やBIOSのソースコードまで開示していて、だから誰でも腕に覚えのある人間ならば、互換性ボードとかBIOSとか作る事が出来た。それにより、IBM-PC互換製品が広がり、IBM-PCは業界標準になったわけですからね。ただ、その後はその互換性路線に苦しめられて、非互換規格のMicrochannelとかに移行して結局IBMのPCビジネスは衰退していくわけですが。

同じプリンターでも、昔はインクだけでなく、印刷用の紙にしても純正品を使わないと駄目なんていう時代もありました。髪質なんかも重要で、ちょっと違う紙を入れるとインクが滲んだりとか、紙詰まりしたりとか。それがバブルがはじけた頃からか「経費削減」が言われて、印刷用の紙も両面印刷や縮尺印刷、さらにはもっとコストの安い再生紙が使えないと買ってもらえない時代になり、その頃から今のように普通紙印刷は当たり前の時代にやっとなったわけですからね。

カラープリンターがそれなりの価格で登場した頃、自宅でカラーのパンフレット印刷ができる、写真印刷が出来る、カラーの年賀状が印刷出来る、というのはかなりの付加価値で、それ故に業者に出せばもっと安く印刷出来ても自分で印刷したものです。ただ、最近だと写真店とかコンビニ簡単に印刷出来たりしますから、実は家庭での印刷ニーズって昔と比べるとかなり減っているようにも感じます。さらに言えば、スマートフォンとかタブレットで、これまでなら印刷して持ち歩いた情報がそのまま携帯できるようにもなりましたから、ますます印刷する機会は減っている気がします。となると、本体価格は抑えて、消耗品で利益を出すこのインクカートリッジのようなビジネスモデルも、そろそろ別の何かに変更しないと厳しそうですね。同じ事は互換カートリッジメーカーにも言えるわけで、コストを掛けて互換製品を作っても、純正品の変更サイクルが上がったり、全体の販売量が伸びないと、どんどん厳しい状況になります。この裁判、仮に判決が逆で互換メーカーの製品が認められたとしても、中々厳しい状況に変化は無いかもしれませんね。

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